交通事故の示談はどのくらいかかる?流れと交渉期間
交通事故の示談は加害者と被害者の意見が一致しなければ成立しないため、スムーズに進まないというケースが少なくありません。交渉が思うように進まず、時間がかかるほど被害者の精神的苦痛は増してしまいます。どんな流れで進めていくものなのかを知らずに待っているだけでは焦りやストレスを感じる一方です。しかし、交渉の流れやおおよその期間を知っていれば、その負担は少なくなるはずです。そこで、今回は示談交渉の流れや交渉期間についてまとめてみました。
交通事故の示談は期限に気をつけよう!
交通事故に遭遇すると、被害者は相手が加入している保険会社に損害賠償を請求することになります。損害賠償の中には自動車の修理代や入通院費のほか慰謝料も含まれます。被害者は損をしないためにも時間をかけて検討したいと思うかもしれませんが、示談交渉には期限があるので注意が必要です。これは、民法724条によって定められているもので、期限は3年です。
後遺障害のない物損事故や人身事故の場合は、事故の発生日が起算点となります。後遺障害がある場合や被害者が死亡した場合は、症状固定日が起算点です。加害者がわからない引け逃げでは事故日を起算点としますが、除斥期間(時効)は20年になります。また、後で加害者がわかった場合は、加害者が発覚した日から3年が示談交渉の期限です。
ただし、裁判になったときや相手の保険会社が被害者に示談金を提示したとき、示談金の一部が支払われたときは期限が中断されます。そのため、これらの状況になった場合は、焦らず交渉を進めることが可能です。
示談交渉の流れは?
示談交渉は物損事故の場合、すぐに交渉が開始されることがあります。しかし、人身事故の場合は被害者の治療が終わった後か、後遺障害の認定後です。ここでは、交通事故直後からの流れを具体的にみていきます。
交通事故発生直後は、まず警察への通報やケガをしている人の救護など事故の対応をします。そして、警察が向かっている間に自分が加入している保険会社に連絡を入れましょう。交通事故直後は目に見えるけがや自覚症状がなくても、時間が経つにつれて痛みやしびれを感じることもあるので交通事故後は必ず病院へ足を運ぶことが重要です。ケガをしている場合は、医師が「完治」や「症状固定」と判断するまで通院します。
通常は、そのあとに相手の保険会社から示談についての文書が送られてきます。文書には慰謝料や休業損害など、交通事故によって与えられた損害や金額が記載されているので、ひとつひとつ確認していきましょう。もし、ここで提示された内容に納得できなければ、納得できない理由や証拠と請求したい金額を提示しなければいけません。こちらの意見を相手の保険会社に送付すると、保険会社はこちらの意見を聞き再度検討をするのです。交渉を進めてお互いが納得できれば示談の成立となり、示談書の作成をします。示談の成立後、1週間から10日で示談金が支払われるのが一般的です。
示談が不成立だった場合は調停や訴訟、裁判外の紛争手続き(ADR)へと進みます。この場合、被害者が受けた損害は被害者自身で証明しなければいけません。そのため、被害者は自分の損害を証明できる資料を収集する必要があります。例えば、交通事故が原因で仕事を休んだのなら「休業損害証明書」、通院のための交通費などを立て替えていたなら「領収書」などの準備が必要です。
万が一、証明できない場合は、損害を認めてもらえないこともあるので、資料は大切に保管しておきましょう。訴訟で判決が出たら、相手はその内容に従って支払いをすることになります。示談交渉の期間の目安は?
一般的なケースの場合
過失割合の争いがあるケース
過失割合とは、その交通事故においてお互いの過失がどのくらいあるのかを示す割合のことです。お互いが動いている車に乗っている状態での交通事故の場合、過失割合が10:0になることはほぼありません。そのため、事故の状況だけではっきりとした過失割合が判断しにくい丁字路や、交差点での事故などで争いが生じることが多くなります。さらに、事故状況を判断できる証拠が少なく、お互いの言い分も食い違うことが多いと示談交渉が長引いてしまうことがあるのです。
示談交渉はお互いが納得しなければ成立しないため、3カ月以上かかることが多いのが実情です。3カ月経過しても示談がまとまらないなら裁判を検討した方が良いでしょう。なぜなら、一定期間交渉しても示談が進まないということは、そのまま話がまとまらず時間だけが過ぎてしまう可能性が高いからです。
損害賠償での争いがあるケース
過失割合はお互いに納得できても、損害賠償の金額に納得ができないというケースもあるでしょう。損害賠償の中身はケガの治療費や自動車の修理代はもちろん、慰謝料や休業損害などさまざまな項目が含まれています。そのため、提示された示談金の損害賠償額や慰謝料に納得できず、スムーズに示談が成立しないことがあるのです。
ただし、この場合、交渉をするのは被害者と相手の保険会社です。そのため、交通事故の当事者同士が争う過失割合に比べると、短期間で交渉が成立することが多いでしょう。ほとんどの場合は3カ月以内に交渉成立となります。ただし、示談書の締結や示談金が実際に振り込まれるまでは、そこから1カ月程度かかると覚えておきましょう。
交渉期間が長引く可能性があるケース
治療の継続中というケース
一般的に、示談交渉は治療が完治や症状固定の診断がされてから開始します。なぜなら、示談交渉をするなら損害賠償額を決めなければいけないからです。損害賠償には治療費や入院費、病院までの交通費なども含まれるため、実際にいくらかかったのかがわからなければ本当の損害額がわかりません。そのため、ケガの状態によっては示談交渉が開始されるまで1年以上かかることもあります。
ちなみに、治療に必要と考えられる一般的な期間は、打撲なら1カ月程度、むち打ちなら3カ月程度です。骨折の場合は6カ月程度と考えられています。しかし、これはあくまでも一般的に考えられている期間です。中にはむち打ちで5~6カ月かかることもあります。
後遺障害等級を争うケース
後遺障害とは交通事故の後遺症の中でも、法律で等級として認められている障害のことです。後遺障害の等級は1~14級までわかれています。一定期間治療を続けても、医師がこれ以上良くならないと判断すると症状固定となります。その後、自賠責保険に等級の申請をして後遺障害の認定を受けるのですが、等級が納得できない場合は異議申し立てをしなければいけません。
診断書や医師の意見書を入手し、手続きをするのに1~2カ月程度かかります。さらに、そこから結果が出るまで数カ月から1年以上かかるので、示談交渉の期間もその分長引いてしまうでしょう。
相手が任意保険に加入していないケース
交通事故の加害者が任意保険に加入していないと、自賠責保険から損害賠償金の一部が支払われるだけです。加害者が自分の資産で損害賠償をスムーズに支払えるのなら問題はないのですが、損害額が大きくなればなるほど難しくなります。加害者が支払うことが不可能な場合は、損害賠償を諦めなければいけないこともあるでしょう。
分割払いという方法もありますが、支払いの期間は長くなりすべて支払われるまで数年以上かかるケースもあるのです。また、示談後に加害者が支払いに応じなければ裁判を起こして損害賠償の請求をしなければいけません。
交渉期間はケースによって変わってくる
交通事故の示談交渉にかかる期間は、ケースによって変わります。一般的には、過失割合の争いや損害賠償額の争いがあるケースが多く、過失割合の争いがある場合は一定期間話がまとまらなければ裁判を検討しなければいけません。また、ケガをしている場合は交渉期間が長引くケースがあります。もし、相手が無保険の場合は、交渉自体は終わっても賠償金の支払いに数年以上かかることも珍しくありません。
自分のケースを当てはめてみれば、おおよその期間を把握することができるでしょう。ただし、示談交渉の期限は3年ということは意識しておきましょう。長期間かかりそうなときは、法律の専門家へ相談するということも方法の一つです。示談交渉の流れや期間を把握して、心にゆとりをもって示談交渉に挑みましょう。
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