【交通事故の被害者版】保険会社の対応と示談交渉成功マニュアル

【交通事故の被害者版】保険会社の対応と示談交渉成功マニュアル

交通事故に遭ってしまったら、場合によっては仕事ができなくなったり、運が悪ければ亡くなったりする危険があります。そのうえ、示談交渉という日常では経験しない場に出なければならないこともあるでしょう。もしものときに焦って決断などを早まってしまうと、とんでもない大損をしてしまうかもしれません。それを防ぐためには、まずは示談交渉の知識がほしいところです。今回は、事故発生から示談交渉の間にしておきたいことや、相手の保険会社の対応などについて紹介します。

被害者は何をすれば良い?示談にいたるまでの道のり

事故に遭った直後

事故に遭った場合、すぐにしなければならないことは3つあります。ケガ人がいる場合は「救助」「警察への通報」「保険会社への連絡」です。警察への通報は、本来なら事故の加害者側がするものですが、被害者側がしてはいけないというわけではありません。加害者が動揺しているなどスムーズに通報を行えない状態である場合は、自分で通報しましょう。まずは警察を、またケガ人がいる場合は救急車も呼びます。その後、保険会社へ事故に遭った旨を連絡しましょう。警察を待っている間、余裕があれば事故現場の写真をとったり事故の瞬間を目撃した人を探しておくとベターです。こういった証拠があると、後の示談で有利になることがあります。

警察や救急車がやって来て、事故の状況を伝え、一段落したなら必ず病院へ行きましょう。なぜなら、自分が事故によってケガをしているなら、後々の示談でそれに対する損害賠償を請求することができるからです。そのためには、事故によってケガを負ったという事実を証明する客観的証拠が必要になります。病院へ行ったら診断書をとるなり、最低限そのときの料金明細は必ずとっておきましょう。

事故から数日後

事故から少し時間が経つと、警察の供述調書をとられます。この供述調書は、後の示談や裁判(示談が成立しなかった場合開廷)でも強力な証拠となりますので、事実を包み隠さずにすべて話しましょう。示談開始のタイミングは?事前に用意するべきものってある?

示談を始めるのはいつ?

事故から時間が経ち、そのときに負ったケガが完治(または症状固定)したときが、示談を始めるタイミングとなります。なぜなら、ケガが完治または症状固定した後でなければ事故による被害の大きさを決定できないからです。示談で決める示談金はこの被害の大きさに対して支払われる金銭なので、これが決定していないと示談は始められません。なお、症状固定とは、その症状がこれ以上の回復を見込めなくなった状態のことで、いわゆる後遺障害が残っている状態を指します。後遺障害がある場合は、それに対しても損害賠償を請求することが可能です。

示談を始めるために必要なものは?

示談を始める前に、必要書類をそろえておきましょう。この必要書類の内容は、物損事故と人身事故で変わってきます。

物損事故の必要書類

物損事故の必要書類は、「交通事故証明書」「修理の見積書」「事故車両の写真」です。交通事故証明書は自動車安全運転センターで、修理の見積書は修理工場などで受け取ることができます。

##人身事故の必要書類

人身事故の必要書類は、7つの書類が必要です。

・交通事故証明書 ・事故発生状況報告書 ・診療報酬明細書 ・給与明細書 ・源泉徴収票 ・確定申告書の控え ・各種領収書

傷害事故の場合は上記の書類に加え、「診断書」「後遺障害診断書」「休業損害証明書」が必要になります。死亡事故の場合は、最初の7つに加えて、「死亡診断書」および「死体検案書」「除籍謄本」「戸籍謄本」が必要です。

いよいよ示談開始!保険会社とのやり取り

示談相手の保険会社の対応

相手の保険会社は、当然ながら相手すなわち加害者の味方です。あの手この手で少しでもこちらの請求額を減らそうとし、あわよくば示談を諦めさせようとしてきます。それでは、どのようなことがありうるかを見ていきましょう。

専門用語を使う

「後遺障害」「過失相殺」「逸失利益」など示談交渉の場は、日常生活で使わない言葉が飛び交います。示談の場におもむくのであれば、こちらも多少専門用語を頭に入れておくと良いでしょう。

一定期間経つと治療費の支払いが打ち切られる

事故から一定の期間は、相手の保険会社から通院費など治療費を支払ってくれます。しかし、それも一定期間が経つと「そろそろ示談交渉を開始したい」と言ってくるのです。一定期間とは、具体的にむちうちの場合が約3カ月以上、骨折が約6カ月以上となります。なぜなら、自賠責保険から支払い可能な治療費の金額に限度(120万円)があるからです。限度を超えた金額は保険会社が負担しなければならないので、向こうはこれを避けたいのでしょう。

休業損害を払いたがらない

休業損害とは、事故でケガをしなければ得ていた可能性のある仕事の収入分の損害です。「専業主婦」「兼業主婦」「専業主夫」などの家事従事者の場合は1日あたり1万円程度の休業損害が認められることが多いでしょう。しかし、実収入がないことを理由にこれを支払わないとする場合があります。

自分側の保険会社が代行できない場合もある

交通事故の示談交渉は、通常被害者と加害者がそれぞれに加入している自動車保険の保険会社同士が行います。この場合、示談交渉中にすることは送られてくる書類(示談書)の中身をチェックし、そこに提示されている示談金の額が納得のいくものであるかどうかを判断するだけです。判断の結果納得がいかないということであれば示談続行となり、どうしても合意にいたらない場合は裁判になります。

しかし、被害者側の過失割合がゼロである場合、加害者が居眠り運転をしていたりよそ見運転をしていたりした場合などは、保険会社の示談代行ができません。この場合は、被害者自身が示談交渉に臨むことになります。しかし、多くの人は法律の知識がないのでただ交渉に臨んでも相手の保険会社に良いように手玉にとられてしまうこともあるでしょう。このため、自分が示談交渉をすることになったときは弁護士や司法書士など専門家へ依頼することも賢明です。

示談交渉の期間は、多くは3~4カ月のうちには終了し、早ければ数週間です。しかし、まれに長引くことがあり、数年にわたる場合もあります。注意したいのは、示談金の請求権である損害賠償請求権の時効は3年ということです。そのため、3年以上にわたって争いが続くとこの権利が失効してしまいます。そうなると、示談金を請求することは不可能になるので、留意してください。

危険はあちこちに!示談交渉の注意点

事故発生直後の注意点

大事なのは、このとき相手から口頭で示談を持ちかけられても決して受けないことです。これは、示談は口頭でも成立するうえ、事故現場で長期的に見て妥当な金額の判断はまずつけられないからといえます。一度成立した結果をくつがえすことは原則できません。場合によっては被害者側が大きな損をすることになりかねないでしょう。最低でも相手に言われるがままにうなずくことと、不用意なサインは控えるべきです。

事故発生数日後の注意点

事故から数日が経つと、警察の供述調書をとられることになります。しかし、このときは絶対に事実以上に自分の非があったとする発言は控えてください。交通事故の示談では、被害者と加害者のお互いの過失割合が大きな意味を持っており、その過失割合を判断するにも供述調書は利用されます。自分に非があったとする発言をすると、後の示談でとても不利です。

事実をねじ曲げるのはいけませんが、実際にはない非を認める必要はありません。ちなみに、供述調書は通常後日とられるものですが、まれに事故現場でとられることもあります。そのときにも、決して事実と異なった内容の調書に署名捺印をしてはいけません。署名捺印前であれば、調書は書き直しを求めることができるので、もし「ここは違う」というところがあればしっかり主張しましょう。

示談を始めるタイミングの注意点

事故によるケガが完治する前、症状固定前に相手の保険会社から「早く示談を始めましょう」という旨の連絡が来ることがありますが、これに応じる必要はありません。必ず完治または症状固定してから示談を始めましょう。そうでなければ、治ると思っていたケガが治らず、後遺症が出てしまったときに、その分の賠償を請求できなくなってしまいます。

人身事故と物損事故の届け出の注意点

交通事故は物損事故と人身事故の2種類です。被害者側に「まったくケガがない」「ケガがあっても病院にかかるほどでもないかすり傷のみ」という場合、物損事故で届け出ることがあります。しかし、示談を行う場合は必ず人身事故で届け出ましょう。なぜなら、人身事故と物損事故では、請求できる示談金の額がまったく違うからです。事故当時は大丈夫だと思ったけど、後からケガが見つかったという場合も、届け出は後から変更できますので、忘れずに変更しておきましょう。

示談交渉を成功させるために

示談交渉では、往々にして大きなお金が動きます。それに伴い、いろいろな人が少しでも自分の側の損をなくそうと働きかけてくるでしょう。こうした場合、何よりも大事なのは「焦らず冷静さを保つこと」「弁護士など自分の味方を作っておくこと」です。示談交渉を成功させるために、何よりも周囲がなくそうとしている損のしわ寄せが自分によってこないために、万が一のときも落ち着いて対処していきましょう。

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