交通事故の慰謝料請求で損をしないために~逸失利益とは

交通事故の慰謝料請求で損をしないために~逸失利益とは

交通事故は平和な日常のなかで潜んでいる誰にでも起こり得るものです。テレビやラジオなどで日々流れる事故のニュースを聞いても、どこか他人事のように感じている方もいるかもしれません。しかし、いざ自分の身に降りかかったときは、どのように対応していけばいいのかわからなくなるものです。

万が一の場合に備えておくべきものでも特に重要なことが、金銭に関わる知識です。いったん起きてしまった交通事故はなかったことにはできませんが、そのダメージを最小限にとどめる知恵を身につけておくことで安定した生活を守ることはできるのです。そのポイントである「逸失利益」について紹介していきましょう。

交通事故で発生する逸失利益とは?

交通事故と逸失利益

交通事故で困ること

ひとたび交通事故が起こるとさまざまな問題が出てきます。自分と相手の安否確認に始まり、警察や損害保険会社、車が故障すれば業者などにも連絡することが必要です。そこで、問題視されるのが、責任の所在になります。電柱など物への損害であれば取返しがつく場合もありますが、人の生命や生活が損なわれた場合は取返しがつきません。そのような損害の程度や責任を問う・問われる関係性など明確にする必要があり、そこから金銭の問題も加わることでさらに複雑な状況になります。

逸失利益とは

交通事故で発生した損害は、他でまかなえないことが少なくありません。最悪人の生命が侵される場合もあります。失ったものは取り返せないため、金銭での解決をはかるという手段が選択されるのです。そのような際に利用される考え方が逸失利益になります。逸失利益とは、事故によって失う将来得るはずであった利益のことです。「このまま働き続ければこのくらいは稼げただろう」という概算のようなものになります。交通事故により命を失ったり後遺症で働けなくなったりした場合には、このような考え方のもと担保される金額が計算されます。

逸失利益はどのように計算される?

逸失利益の計算方法

逸失利益の計算に必要な要素

逸失利益は失われた将来的な収入の観測といえますが、その計算にはいくつかの根拠ある数値が使用されています。使用される数値は、基礎収入、労働能力喪失率、生活費控除率、中間利息控除、ライプニッツ係数などです。それらは、交通事故による損害の程度で使い分けられます。

後遺症による逸失利益

交通事故で運よく命はあったものの、身体の損傷によっては満足に働けなくなることがあります。そのような状況になると逸失利益が発生しますが、その計算式は基礎収入×後遺症による労働能力喪失率×ライプニッツ係数です。この式を用いることで、後遺症がなければ得られるはずだった収入を計算することができます。

生命が侵害された場合の逸失利益

交通事故で不幸にも命を落とした場合には、被害を受けた側に逸失利益が発生します。その際、使用される計算式は、基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応する中間利息控除率です。中間利息控除率はいわゆるライプニッツ係数のことになります。ライプニッツ係数という名称は過去に存在したライプニッツという哲学および数学者が名称の由来です。このような係数を用いることで、複雑になりがちな利息の発生を加味した計算を実現しています。

逸失利益の計算に必須!基礎収入とは

基礎収入は逸失利益計算のベース

基礎収入とは

逸失利益を計算するうえでベースになるのが、交通事故の被害を受けた本人が将来的にどのくらい稼ぐことができたかということです。そのため、逸失利益の計算には基本的に事故前の収入が採用されます。事故前の収入を基礎収入とよびます。基礎収入は、個人により大きくばらつきのある数値です。この基礎収入が高ければ高いほど逸失利益も高くなる比例関係にあります。

基礎収入の決定因子!賃金センサスとは

基礎収入が高ければ不満は出にくいですが、問題は低い場合です。「今後儲かる予定だった」と背伸びをしてみても、逸失利益などの金銭を扱う問題ではそのような不確かな要素を参考にすることはありません。このような計算を確かなものにするために、ある程度根拠が保証されているデータを元に算出されているものが、賃金センサスです。賃金センサスは、「どのような人がどのくらい稼ぐ可能性があるか」について、その平均値を割りだしたものです。

賃金センサスが適用されるパターン

賃金センサスは、年齢と性別ごとに算出された平均的な収入です。年齢と性別で決められており、実際に働いてない人が被害を受けた場合にこの統計が利用されます。たとえば、学生や幼児、主婦などには収入が発生しませんが、賃金センサスを元に逸失利益が計算されます。サラリーマンや自営業者など収入のある方であれば、事故前の収入に応じて基礎収入が決まりますが、平均値より低い収入であれば、高い方が採用される場合もあるのです。

失われた労働力をあらわす「労働能力喪失率」

逸失利益の計算に必要な労働能力喪失率

労働能力喪失率とは

逸失利益を計算するためには基礎収入を使用する必要がありますが、それと並んで労働能力喪失率も計算に加味されます。労働能力喪失率とは、交通事故による後遺症で、「どの程度労働能力が失われたか」という割合をあらわす数値です。単位は100分率であらわされ、重症になれば100%に近くなり、軽症であれば、低い割合で設定されます。障害といってもさまざまな種類があるため、客観性をもたせるために障害別等級表を利用します。

自分の障害レベルを把握

後遺症がある場合の逸失利益を計算するうえで、障害のレベルを把握することが重要になります。障害別等級表を参照するのですが、これは自動車損害賠償保障法という法律に基づいて公的に定められているものです。1~14等級まであり、数字が小さいほど障害の重症度は高くなります。同じ障害でも、病気などの後遺症がある場合の障害者認定とは別物になるので間違えないようにしましょう。交通事故などで障害認定しているのは自動車損害賠償保障法であり、病気などの場合は身体障害福祉法による障害認定です。

数学の利用!ライプニッツ係数とは

ライプニッツ係数とは

ライプニッツ係数=中間利息控除率

逸失利益の計算において重要なウェイトを占めるのが、ライプニッツ係数です。予備知識がない人がこのような文字をみると、それだけで抵抗を感じてしまうかもしれません。ただ、役割としてはシンプルなものです。それは、利息を控除するということです。通常、逸失利益は一括で払い込まれます。高額なものであれば何百、何千万という値段になるため、利息分を抜いて計算するためにライプニッツ係数を使うのです。

何で逸失利益は利子を省いて計算するの?仕組みがわかりにくい方へ

逸失利益は自賠責保険から支払われるものです。ただ、計算で利息を省くというイメージがつかないという方もいるようですが、そのような場合は損害を金銭の貸し借りにたとえて考えるとわかりやすくなります。

仮にAさんがBさんから損害を受けたとしましょう。この場合、BさんはAさんに損害を与えたため借りをつくったということになります。Aさんからすると、Bさんに損害を貸したという状況ともいえるでしょう。通常金銭の貸し借りでは金利が発生しますが、そのようなイメージで、損害でも長期間借りを返さない状況が続くと利息が大きくなります。そうなると支払する金銭の整合性や平等性が保てにくくなるため、ライプニッツ係数を用いて利息を計算、控除する仕組みが採用されているのです。

ポイントは相場観をもつこと!交通事故でも慌てないために

逸失利益の相場観をもって冷静に対応しよう

交通事故は突然降りかかるものです。多くの手間がかかったりお金が動いたりするもので、精神的に焦って気づけば損をしていたということもあります。そのような事態になる前に、トラブルが起こった際に「どのように対処すれば損をしないか」「少しでも負担を減らすことができないか」について考えて情報収集しておくことが肝要です。ぶれないために、万が一のリスク管理を日ごろから心がけておきたいものですね。

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