交通事故の示談を弁護士に相談したほうがいいケースとは
交通事故の被害者になったら、示談交渉のうえで損害賠償金を受け取るのが一般的です。しかし、普通に暮らしている限り示談が必要になるケースはそうそう多くもなく、示談といわれても何をしていいのかわからない人もいるでしょう。そんなときに真っ先に思い浮かぶのが弁護士です。今回は、交通事故の示談を弁護士に相談したほうがいいケースや、弁護士ではなく認定司法書士に依頼したほうがいいケースなどについて解説していきましょう。
交通事故の示談は被害者1人でもできる?
交通事故の示談は、弁護士に依頼しなくても被害者自身で交渉可能です。加害者が任意保険に加入している場合、加害者が加入している保険会社の交渉担当者が示談の代理を務めるケースがほとんどです。被害者も自分が加入している保険会社に依頼することは可能ですが、被害者の過失割合が0の場合は保険会社による示談交渉はできません。当事者同士の示談交渉では感情的になって話がこじれる恐れもあるので、保険会社に代行してもらうのはおすすめの方法です。
しかし、多くの示談交渉を行っている保険会社は、示談交渉のプロともいえます。どうすれば保険会社の負担が軽くなるかをわかっており、保険会社に有利な内容で示談を進めようとします。たとえば、被害者に通院が必要で治療費がかかっている場合、治療が長期になるほど損害賠償金額は高くなる傾向です。入院治療の費用が自賠責保険の基準内で収まっているうちはまだしも、基準より高くなってくると治療費の打ち切りを打診してくるケースがあります。
本来なら、保険会社の都合で治療費を打ち切る必要はありません。しかし、被害者に示談交渉についての知識がない場合、そういうものなのかと諦めて保険会社の言いなりになってしまうケースも多い傾向です。示談に慣れている保険会社を相手にするには、それ相応の知識が必要になります。ただ、示談に関する知識は複雑で、勉強するだけでも大変です。被害者1人でも交通事故の示談は可能ですが、それなりの手間と時間をかける必要があるでしょう。
交通事故の示談交渉を依頼できる専門家の種類
交通事故の示談交渉を依頼できる専門家は2種類です。
弁護士
交通事故の相談といえば、弁護士を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?弁護士の司法試験は国家試験の中でも難易度の高さで知られています。弁護士の業務は、裁判所に提出する書類作成から示談交渉、調停、裁判の代理業務など、多岐に渡ります。
認定司法書士
司法書士とは、裁判所や検察庁へ提出する書類を作成したり、不動産登記業務を行ったりするなどが主な業務です。通常、司法書士は交通事故の示談交渉は行えません。しかし、簡裁訴訟代理能力認定考査に合格して法務大臣から認定を受けている司法書士は別です。認定司法書士は、その範囲は限定されるものの交通事故の被害者に代わって示談交渉が可能です。
交通事故の示談を弁護士に相談したほうがいいケース
「示談が長期化しそう」「加害者との話し合いがまとまらない」など、示談交渉がうまく進まない場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。特に、下記の場合は認定司法書士よりも弁護士のほうが向いています。
損害賠償請求が140万円以上の場合
認定司法書士が扱えるのは、損害賠償請求金額が140万円以下の場合に限ります。140万円以上になると、示談交渉ができません。交通事故の規模や被害者のケガ、後遺障害の状況などから損害賠償金額が高額になりそうなら、最初から弁護士に相談したほうがいいでしょう。損害賠償金額が140万円超えるかどうか微妙な場合も、弁護士に相談するのがおすすめです。仮に、認定司法書士に依頼をしたあと、示談交渉中に損害賠償金額が140万円以上になると判明した場合、新たに弁護士を探して相談し直さなければなりません。手間と時間、司法書士と弁護士への相談料が倍かかってしまいますので、注意が必要です。
調停・訴訟に発展しそうなケース
交通事故が発生すると、まずは被害者と加害者が和解できるように示談交渉を進めます。交通事故の場合、示談交渉で解決するケースが多く、調停や訴訟にまで発展するケースは珍しいです。しかし、どうしても示談金で折り合いがつかなかったり、被害者と加害者の言い分に食い違いがあったりする場合は、調停に移行したほうがかえって長期化の防止になります。調停でも決着がつかない場合は民事裁判になりますが、通常、調停や裁判では被害者側に費用が発生します。
費用がかかっても弁護士費用がかかっても、調停や裁判をする価値があるなら問題はありません。しかし、損害賠償金額がそこまで高くない交通事故に対して調停や裁判を行ったり、話し合いを長期化させたりするのは、被害者にとって大きなマイナスになります。ここで考えられるのは、調停や訴訟に持ち込まれる交通事故は、損害賠償が高額になりやすい可能性が高いということです。示談交渉中に加害者側の出方を見て、トラブルに発展するかもしれないけれど高額の損害賠償が見込める場合は、弁護士に依頼するのをおすすめします。
示談の相談は認定司法書士のほうがいいケースもある
認定司法書士に示談の相談をしたほうがいいケースは、損害賠償額が140万円以下の場合です。法律のプロと呼ばれる職業には、弁護士や司法書士のほかに行政書士もあります。この中で一番業務の守備範囲が広いのは弁護士です。司法書士や行政書士ができる業務は、弁護士も行えます。逆に、司法書士や行政書士には業務の制限があるため、弁護士のように広い範囲の法律業務は行えません。
これは弁護士の大きなメリットのひとつですが、逆にデメリットになる場合もあります。弁護士は業務範囲が広い分、さまざまな法律相談を請け負います。その中で、損害賠償金額が安い交通事故案件には応じてくれないケースがあります。損害賠償金額が少ないということは、それだけ弁護士報酬も少ないということです。弁護士に対する依頼が多ければ、あえて損害賠償金額の安い案件を受ける必要はありません。
一方、認定司法書士は安い損害賠償金額の示談交渉しか行えません。そのため、弁護士に断られてしまうような場合でも、認定司法書士なら相談に応じてくれます。60万円以下の少額訴訟なら1日で終わりますので、損害賠償金額が140万円以上になる心配もありません。また、認定司法書士への依頼料は、弁護士費用よりも安くなるケースが多いのもメリットです。もし、弁護士特約付帯の自動車保険に入っているなら、認定司法書士に依頼する場合でも使用できますので、被害者が負担する依頼費用は0です。
示談や訴訟などの依頼というと弁護士という印象は強いでしょう。しかし、示談交渉ならすべて弁護士が向いているかというと、そうでもありません。法律のプロに依頼をする場合は、自分が置かれている状況を総合的に考えて、どの専門家に相談するかを決めることが大切です。示談交渉で正当な損害賠償金額を獲得するためにも、依頼する専門家もしっかり見極めるようにしましょう。
弁護士に示談を相談するなら損害賠償金額が高いケースにしよう
弁護士に示談交渉の相談をするなら、確実に損害賠償金額が高くなる場合がおすすめです。ただ、交通事故にあったのも示談交渉も初めての場合は、損害賠償金額がいくらになるのか検討もつかない人が多いでしょう。最初の相談なら無料で行っている弁護士も増えており、インターネットでもさまざまな情報が手に入ります。まずは、自分で示談に関する情報を調べてから、専門家に依頼するようにしましょう。最初から認定司法書士より弁護士に依頼したほうが良いという声もありますが、それも状況次第です。自分にあった専門家に依頼するのがおすすめです。
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