交通事故にあったら知っておくべき示談金の内訳とは
交通事故の被害者になった場合、加害者に対してさまざまな種類の金銭を請求することができます。自動車保険に加入していれば、相手方との示談は保険会社にまかせるのが一般的です。しかし、相手方に100%の過失があって保険会社が示談を代行できないときなど、自ら交渉を行う必要が生じることがあります。また、相手方から提示された金額に納得できないかもしれません。この記事では、そうした際に備えて知っておくべき知識についてお伝えします。
示談金とは
示談金とは、交通事故の被害に遭ったとき、相手方から受け取れる金銭の総称です。もし、被害者となったとき、相手方から提示される示談金が妥当な金額とは限りません。支払う保険金をなるべく少なくおさえたい保険会社は、基本的に少なめな金額を提示すると考えておいた方が良いでしょう。金額の妥当性を判断するためには、「示談金とは何なのか」ということを理解しておく必要があります。示談金は損害賠償金と慰謝料に分けることが可能です。以下、それぞれについて詳しく解説します。
損害賠償金について
損害賠償金とは
損害賠償金とは、交通事故が原因で生じた経済的な不利益を穴埋めする性質の金銭です。被害者が受ける損害は、物的損害と人身損害に分けられます。
物的損害の種類
修理代
車の修理に要した費用です。実際に修理していなくても修理費相当額を請求できます。ただし、過剰な装飾の修理費や原状回復を超える修理費は認められないことがあります。
代車費用
被害に遭った車が利用できない間の代車に要する費用です。
評価損
一般的に事故歴のある自動車の買取価格は事故歴のない自動車よりも低くなります。修理しても回復できない部分については、損害賠償金の一部として認められます。
買替差額
「被害に遭った車の修理が不能」「買い替えた方が安くなる」という場合、買い替えに要する金額と被害に遭った車の処分価額との差額に相当する金額が損害賠償金となります。
人身損害の種類
治療費
ケガの治療にかかった費用が基本ですが、このほか車いすや義手・義足などが必要になった場合の費用も含まれます。ただし、交通事故の前から患っていた持病の治療費や、常識的に過剰と思われる治療費は認められないことがあるため注意が必要です。
交通費
通院にかかった交通費になります。なお、タクシー代はその利用が相当と認められる場合に限られるのが一般的です。
葬儀代
被害者が亡くなっている場合、葬儀にかかった費用も損害賠償金として請求可能です。裁判実務では、葬儀関係の費用は原則として150万円を上限に、実際に支出した金額が認められています。なお、葬儀費用には仏壇や墓碑の建立費等も含まれます。
休業損害
休業損害は文字通り、交通事故が原因で仕事ができなくなった間に得るはずだった収入です。
後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益とは、後遺症が出ることで減ると考えられる収入のことです。計算式は次のようになります。
1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×ライプニッツ係数
労働能力喪失率は障害等級ごとに定められていて、例えば第1級なら100%、第7級なら56%、第14級なら5%となっています。等級の値が小さいほど、症状は重いということです。
ライプニッツ係数とは割引率のことです。本来、収入は時間をかけて得るものです。例えば、年収が400万円であと20年働けるという場合、400万円×20年=8,000万円の収入が得られます。しかし、それを一時金として現時点で受け取る場合、運用すれば得られる利息相当額を差し引かれるのが一般的であり、その割引率のことをいいます。
そのため、ライプニッツ係数の値は働ける年数よりも小さい値となります。20年の場合は12.462です。労働能力喪失率を50%として計算すると、逸失利益は400万円×50%×12.462=2,492万4,000円となります。
死亡逸失利益
死亡逸失利益は、交通事故の被害者が亡くならなければ得られたであろう収入のことです。計算式は次のようになります。
(1年あたりの基礎収入×稼働可能期間×ライプニッツ係数)-生活費相当額
死亡逸失利益の計算においては、労働能力喪失率のかわりに稼働可能期間を乗じて計算します。稼働可能期間は死亡時から67歳までの年数です。また、生きていれば生活費もかかりますので、生活費に相当する金額を差し引く必要あります。
慰謝料について
慰謝料とは
慰謝料とは、精神的苦痛に対して支払われる賠償金のことです。被害者が死亡した場合、遺族の苦痛に対しても支払われます。慰謝料の金額を決める基準には主に自賠責基準、任意保険基準、弁護士(または裁判)基準の3つがあります。
自賠責基準
自賠責基準とは、車やバイクを所有するなら必ず加入する自賠責保険(自動車賠償責任保険)が定めている慰謝料の計算方法です。自賠責保険は基本的に必要最低限の補償をすることが目的なので、金額は他の基準よりも低く出るのが一般的です。
任意保険基準
任意保険基準とは、自動車保険の保険会社がそれぞれ独自に定めているもので、金額は公開されていません。基本的に任意保険は自賠責保険で足りない分をカバーするためにあるので、任意保険基準で算出された慰謝料は、自賠責基準より高くなる傾向にあります。
弁護士(裁判)基準
弁護士(裁判)基準とは、過去の判例をもとにして計算された慰謝料の計算方法で、弁護士が保険会社と交渉する際に利用するものです。金額は日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称:赤い本)に掲載されています。3つの基準の中では最も高額になります。
ADR(裁判外紛争解処理手続)基準
以上、3つが一般的ですが、まれにADR基準というものが利用されることがあります。これは交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センターなどが仲介して示談交渉を進める場合に利用されるものです。金額については弁護士基準に近い値となるようです。
慰謝料の種類
慰謝料は入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種類があります。それぞれを簡単に解説します。
入通院慰謝料
自賠責基準で入通院慰謝料を計算する場合、1日につき4,200円として計算されます。これに被害者の症状や治療日数を加味した日数を乗じて計算するのです。被害者が妊婦の場合で胎児が死産あるいは流産となった場合、別途慰謝料が上乗せされます。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は交通事故で後遺症が出たまま生きていく精神的苦痛に対する慰謝料です。後遺障害慰謝料は第1級~第14級まである等級によって金額が変わってきます。
死亡慰謝料
死亡慰謝料は、被害者本人の慰謝料と遺族の慰謝料があります。自賠責基準の場合、被害者本人の慰謝料は350万円で、遺族の慰謝料は請求者の人数により異なる傾向です。請求者が1名なら550万円、2名なら650万円となっています。
示談金を増やすなら、専門家に交渉を依頼しよう
示談金の計算はとても複雑です。相手方の保険会社から提示される金額はあくまで相手方が計算した金額でしかなく、なるべく支払いを減らしたいがゆえに低い見積もりで提示してくる可能性が高いです。そのため、相手方の過失が100%のようなケースでは、弁護士や司法書士といった専門家に交渉を依頼するのがベストといえるでしょう。
費用は自動車保険に弁護士特約をつけていれば、特約を使うことが可能です。「弁護士特約」という名称ですが、司法書士に依頼する場合でも使えることがあります。そのため、「使えるかどうか」を知りたい場合は契約している保険会社や代理店に問い合わせたり、約款を確認したりしてみてください。
現時点で弁護士特約をつけていない場合は検討してみましょう。弁護士特約の保険料は保険会社によって異なりますが、年間で1,500~3,000円程度となっています。
適切な対処法を覚えておきましょう
交通事故の被害者になった場合、相手方に対して請求できるお金はしっかりと請求すべきです。多くの人は交通事故の経験が少ないため、何も知らないでいると相手の言いなりになってしまいかねません。そのため、示談金というものが「どういう性質なのか」「適切な金額で請求するためにはどうしたら良いか」を知っておき、いざというときに備えておきましょう。
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弁護士が代わりに交渉することで、損害賠償額を増額できる可能性があります。過失割合や後遺障害の等級が適正かどうか、見直すことができます。交渉はすべて弁護士が対応するので、ケガの治療に専念できます。弁護士法人ステラは、多くの保険会社との交渉実績があります。国内保険会社・外資系保険会社問わず、全国の保険会社と交渉できます。
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