交通事故の裁判の流れ

交通事故の裁判の流れ

本人や家族が交通事故の被害に遭い、加害者や保険会社との賠償についての話し合いに納得できず、示談ができないというケースも少なくありません。そんなときは、裁判を提起するという方法もあります。裁判というと、法律や手続きが難しく面倒なイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。しかし、被害に遭った方が、適切な賠償金などを得ることができるというメリットもあります。ここでは、交通事故の裁判の流れについて、説明します。

交通事故の裁判の種類

交通事故の裁判には、民事裁判と刑事裁判の2つの種類があります。民事裁判は、誰でも提起することができ、加害者の被害者に対する損害賠償義務の有無や金額が争われる傾向です。刑事裁判を提起することができるのは検察官のみで、加害者に刑罰を負わせるべきかどうかや量刑について争われます。

交通事故の被害者が提起する裁判は民事裁判

交通事故の場合、まず、被害者と加害者や加害者側の保険会社が慰謝料の金額や過失割合について、示談交渉をします。過失割合とは、事故の当事者それぞれの事故結果に対する責任の割合のことです。過失割合によって損害賠償金の額も違ってきます。示談交渉がまとまらなかった場合、被害者が加害者に対して民事裁判を提起するか調停の手続きをとることになるでしょう。調停の手続きをとっても和解できなかった場合は、民事裁判を提起することになります。

交通事故の裁判の前に被告を誰にするか決める

交通事故の民事裁判を裁判所に提起する前に、被告を誰にするか決めなければなりません。被告は、原則として加害者本人ですが、交通事故の状況によっては、第三者になることもあります。場合によっては、被告が加害者本人を含めた複数人になるケースも見られます。

いずれの場合でも、被告は「損害賠償義務のある者」になります。損害賠償義務のある者とは、加害者本人や使用者(雇用主)、運行供用者などです。使用者は、被用者(雇用されている者)が業務上、第三者に加えた損害を賠償する責任を負うことが民法で定められています。そのため、使用者が業務中に交通事故を起こした場合、使用者にも損害賠償責任が発生します。

また、運行供用者は、自動車損害賠償保障法で損害賠償義務を負うことが定められています。具体的には、「事故を起こした自動車の所有者」「事故を起こした自動車を貸した者」「事故を起こしたレンタカーの貸主」などが運行供用者に該当する可能性があるのです。

このように、交通事故では、「損害賠償義務を負う者」が多岐にわたり、被告を誰にするか難しいケースもあるでしょう。そのため、司法書士などの専門家に相談してから裁判を提起することがおすすめです。

具体的な交通事故の裁判の流れ

具体的な交通事故の民事裁判の流れは、下記の通りです。

  • 1.裁判所に訴状を提出
  • 2.第1回口頭弁論期日の指定
  • 3.争点の整理と証拠の提出
  • 4.和解協議

民事裁判の場合、どの段階であっても和解が成立した場合は、裁判が終了します。和解が不成立だった場合は、続いて尋問が行われて判決になります。判決に納得すれば、裁判は終了です。判決に不服がある場合は、控訴状を提出し控訴・上告した後、判決が確定し、裁判終了となります。

交通事故の裁判の手続き

1.裁判所に訴状を提出

交通事故の民事裁判を提起する場合は、まず訴状を裁判所に提出します。「被害者の住所」「被告となる人の住所」「交通事故の発生場所」のいずれかを管轄する裁判所に提出。また、請求する金額によって裁判所の種類が違い、140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所に訴状を提出します。

訴状とは、民事訴訟法上、訴えの提起に際して裁判所に提出する書面のことです。訴状には、「当事者の住所氏名」「請求する金額」「事故の内容」「請求する金額の内訳」などを記載します。代理人を選定した場合は、委任状などの提出も必要です。裁判所は、不備がなければ訴状を受理します。

これで正式な裁判が開始です。同時に、裁判所に所定の費用を納めましょう。費用は、印紙と郵券で支払うため、印紙郵券代といいます。印紙代は訴額に応じて、郵券代は被告の人数によって定められます。裁判所は訴状を受理した後、被告に訴状の写しと期日呼出状などの送付が必要です。

被告は、裁判所が指定した期日までに、訴状に対する答弁書を提出します。裁判所は答弁書を受理した後、写しを原告に送ります。原告は、訴状と答弁書を比較して、相違点を見つけるのです。原告と被告は、第1回口頭弁論期日までの間に、争点についての証拠書類や証人を準備します。

2.第1回口頭弁論期日の指定

第1回口頭弁論期日は、裁判所が指定します。この期日は、訴状を提出した1~2カ月後です。被告は、裁判所から指示された提出期限までに答弁書を提出しておけば出席する必要はありません。被告が、第1回口頭弁論期日に欠席し答弁書も出さない場合は、訴状に対し反論がないとみなし、法律上問題のない範囲で原告の請求を認める判決を出します。

一方、原告は、裁判に必ず出席することが必要です。なぜなら、原告も被告も欠席すると、裁判所は弁論を休止し次回の口頭弁論期日も指定しないからです。そのまま当事者が期日指定の申立をせずに1カ月が経過すると、裁判所は原告が訴えを取り下げたものとみなし、裁判が終了します。

3.争点の整理と証拠の提出

第1回口頭弁論期日の後は、月に1回ほどのペースで期日が設定され、争点の整理を進め、証拠の提出などを行います。必要があれば、証人喚問も行われ、この流れを数回繰り返し、裁判所の判断が下されるのです。

4.和解協議

裁判所は、争点の整理や証拠の提出が済むと、和解案を提示します。これを和解勧告といいます。裁判所が和解勧告をする時期は決まっているわけではなく、裁判の進み具合で適切なタイミングを判断して勧告するのです。そのため、裁判の状況によっては、和解勧告がなく判決にいたるケースもあります。裁判所が和解勧告で提示した和解案について、原告と被告の双方が協議。この協議で和解が成立すれば、和解調書が作成されて裁判は終了です。

交通事故の民事裁判では、裁判中であっても和解することができます。裁判の期日外に、原告と被告が協議して和解が成立すれば、告訴を取り下げることも可能です。また、和解内容を裁判上の和解にする方法もあります。原告と被告の和解が成立しなかった場合は、次の尋問、判決へと進むのが流れです。

5.本人尋問と証人尋問

和解協議でも和解が成立しなかった場合は、判決の前に本人尋問や証人尋問が行われます。交通事故の裁判では事故の状況や被害の実態などについて、原告と被告の主張が異なっていることがしばしばです。この相違点で、どちらの主張が正しいのか判断するために、原告と被告双方に本人尋問を行います。

さらに、過失割合や因果関係を明らかにするために、「事故の目撃者」や「医師」などからの証人尋問が必要になることもあるでしょう。これらの尋問が終わった後、判決の前に、再び和解協議が行われるケースもあります。

6.判決の言い渡し

裁判所は判決に必要な主張や証拠が出そろい、関係者への尋問なども終えると、「弁論の終結」を宣言して「判決の言い渡し期日」を指定します。この期日に、判決が言い渡されますが、当事者は出席しなくてもよいことになっているのです。後日、判決書が送付されてきて、当事者が、判決書を受け取った日にあたる判決送達日から2週間以内に控訴状を提出しなければ判決が確定し、裁判は終了します。また、判決の言い渡し期日までに裁判所で当事者間の和解が成立すれば、裁判は終了です。

7.判決に納得できないときは控訴

判決の結果に不服があり控訴するためには、判決送達日から2週間以内に控訴状を第1審裁判所に提出しなければなりません。控訴状とは、第1審の裁判の取り消しまたは変更を求めて控訴を提起するために、裁判所に提出する書面です。さらに、控訴状を提出して控訴を提起した後、50日以内に控訴理由書を提出する必要があります。

第2審の裁判所が控訴を受理した後は、第1審の裁判と同様の流れになります。また、第2審の判決にも納得できない場合は、上告という制度もありますが、交通事故の民事裁判では、あまり認められた例がありません。

交通事故の裁判の期間

交通事故の民事裁判では、裁判の提起から判決の確定まで、平均して1年6カ月程度の期間を要します。事案によって違いがあり、和解が早く成立すれば裁判は短期間で終了しますが、控訴までもつれこめば2年以上かかるケースもあるのです。

交通事故の裁判は弁護士などに委任するのが最善の方法!

交通事故の民事裁判では、民法や自動車損害賠償保障法などの法律が複雑に絡み合っています。そのため、「裁判の提起」「弁論」「証拠の提出」「証人の選定」など多くの手続きが必要です。判決が確定するまでの期間も長く、裁判の費用もかかります。そういったことを考慮に入れると、交通事故の裁判や和解を有利に進めるためには、弁護士など、法律の専門家に委任するのが最善の方法といえるでしょう。

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